水曜日の夜、ジュリエットはあの薬を飲み干した。その胸には修道士へのいろんな疑いが去来した。たとえば、自分とロミオを結婚させたことで不名誉をこうむらないために、自分に毒を与えたのではないか、いや、あの人は聖者として世に知られているではないか。それに、ロミオが迎えにくる前に目が覚めてしまわないだろうか。あんな恐ろしい場所、キャピュレット家の死者の骨でいっぱいな納骨所、血まみれのティバルトが、経かたびらを着てくずれかかって寝ているところ、そういう場所で、自分は気が狂ってしまうのではないか。自分が昔聞いた、死体を安置する場所にうろついている幽霊の話などもいろいろ考えていた。しかし、やがて、ロミオへの愛や、パリスへの嫌悪を思い返して、無我夢中で薬を飲み干し、気を失った。 朝早く、パリスが花嫁の目を覚まそうと、音楽隊をひきつれてやってくると、そこには生きているジュリエットは存在せず、寝室には命なきむくろがあるだけという、恐ろしい情景を見せていた。 パリスの希望は今やついえてしまった。邸全体がすざましい困惑に包まれてしまった。かわいそうなパリスは花嫁の死を惜しんだ。この世で一番憎むべき死によって、パリスは花嫁を奪われたのだ。まだその手は結ばれもしないのに、パリスから離れていってしまったのだ。
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