No.25

しかし、それにもまして気の毒なのは、キャピュレット公夫妻が悲しんでいることであった。夫妻にとってジュリエットはただひとりの子どもであった。ふたりが共に喜びと慰めの元としていた、たったひとりのふびんな愛《いと》し子であったのに、無慈悲なる死によって、この世から奪い取られてしまったのだ。慎重な両親が、先々見込みのある良縁によって、ジュリエットが世に出てゆく(こう2人は考えていた)のを見ようとしていた、まさにそのときに死んでしまったのだ。祝宴のためにと用意されたものは、すべて用途が変更され、暗い葬儀のために使われることとなった。婚礼のごちそうは悲しい埋葬の宴に使われた。婚礼の賛歌は陰気な葬送歌へと変更された。陽気な楽器はもの悲しい鐘となった。花嫁が通る道にまかれるはずだった花は、その亡骸にまくものとなった。彼女を結婚させる司祭の変わりに、埋葬する司祭が必要だった。ジュリエットは確かに教会へと運ばれていったのだけれど、それは生ける者たちの楽しい希望を増すためではなくて、みじめな死人を増やすためであった。

 悪い知らせというものは、いつもよい知らせよりも早く伝わるものである。ロミオの元に、ジュリエットが死んだという暗いニュースが運ばれてきたのだが、それはロレンスがよこした使いのものが来る前のことであったのだ。ロレンスはロミオに、ジュリエットの葬式は偽装したもので、その死は演出された影にすぎぬこと、ロミオの愛する娘は、ほんの少しの時間墓の中に横たわっていて、ロミオがそのような寂しい場所から彼女を救出しにやってくるのを待っているのだということを知らせるはずだったのだ。

 


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