そこで、修道士はこう助言した。家に帰って、うれしそうに、父の望みに従ってパリスと結婚すると伝えなさい。そして翌晩、つまり結婚式の前夜を迎えたら、今から渡す薬びんの中身を飲み干すように。その薬を服用後 24時間たつとそなたの体は冷たくなり、仮死状態になるのだ。朝になって花婿がそなたを迎えにくるが、彼はそなたが死んでいると思うだろう。そこで、この国の習慣に従って、棺にはおおいをかけないで、一家の納骨堂におさめるために運ばれてゆくだろう。そこでもしそなたが、女として当然抱くような恐怖心を捨てて、この薬を飲んでもらえたら、薬を飲んでから42時間たつと(これは確実にそうなるのだ)朝目が覚めるみたいに必ず目覚めるのです。あなたが目覚める前に、この計画についてあなたの夫に知らせておきます。彼は夜のうちにやってきて、あなたをマンテュアへ連れていくでしょう。 ロミオへの愛と、パリスと結婚することへの恐怖が、若いジュリエットにこのような身の毛もよだつ冒険に着手する力を与えた。ジュリエットは修道士から薬びんを受け取り、必ず指示を守りますと約束した。 修道院からでると、ジュリエットはパリス伯に会い、上品そうなそぶりで、彼の花嫁となる約束をした。これはキャピュレット公夫妻にはうれしい知らせであった。老公は若返ったように見えた。ジュリエットは、伯爵を拒否したことではなはだしく父の機嫌を損ねたのだったが、今度はすなおに結婚すると約束したので、父は機嫌を直した。家中が、近くおこなわれる婚礼のしたくで大騒ぎとなった。そのお祭り騒ぎをヴェロナ始まって以来の規模でするためには費用はおかまいなしだった。
|