「頭を下にして、いったい どうして そんなにおちついてしゃべってられるんですか?」とアリスは、騎士の足をつかんでひきずり出して、土手にぐったりと横たわらせてあげながらきいてみました。 騎士(ナイト)は、この質問におどろいたようでした。「ぼくの体がたまたまどこにあったって、関係ないでしょう。頭はぜんぜん変わらずにはたらき続けるんだよ。いや実は、頭が下にあればあるほど、新しいものをどんどん発明できるんだよ」 ちょっと間をおいて、騎士(ナイト)は続けます。「さてぼくがやったその手のことでいちばん賢いのが、ごはんで肉料理を食べてる間に、新しいプリンを発明したことだったのね」 「そのごはんのデザートに間に合うように思いつんたんですか?」とアリス。 「いや、 そのごはんの デザートは無理だよ」と騎士(ナイト)は、ゆっくり考え深げに申します。「いやいや、まさかそのごはんの デザート はね」 「じゃあ、その次の日になっちゃったんですね。一回のごはんで、デザート二回は無理ですもんね」 「うん、いいや 次の 日でもなかったな」と騎士は、さっきのように繰り返します。「いやいや次の 日 ではね。いや実は」と頭を下げて、そして声をどんどん落としながら続けます。「実はあのプリンが実際に料理されたことはないと思うんだよ。それどころか、そのプリンはこれからだって、ぜったい料理されることはないと思うよ! それでも、発明するのに実に巧みなプリンではあったわけ」 「それって、何でつくるつもりだったんですか?」とアリスは、騎士(ナイト)を元気づけようとしてきいてみました。かわいそうな騎士(ナイト)さんは、このことでかなり落ち込んでいるみたいだったからです。 「まずは吸い取り紙を用意しまして」と騎士(ナイト)は、うめきながら答えます。 「それじゃあんまりおいしくなさそう――」 「それ だけ なら、そりゃおいしくないよ」騎士(ナイト)は喜々としてわりこみました。「でも他のものと混ぜると、もうぜんぜんちがってくるんだよ――火薬とか、封蝋なんかと混ぜるの。で、ここでお別れだ」二人はちょうど森のはずれまでやってきたのでした。 アリスは、ぽかーんとした顔をするしかありませんでした。なんせ、プリンのことを考えていたもので。 「悲しいんだね」と騎士(ナイト)は心配そうに申します。「歌をうたってなぐさめてあげよう」
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