No.93

 これはずいぶんと長い時間がかかりました。アリスはとっても気をつけて袋の口を開いていたのですが、騎士(ナイト)がお皿をいれるのに、まったくとんでもなくぶきっちょだったからです。最初の二、三回は、お皿を入れようとして自分が袋の中におっこちてしましました。「なかなかおさまりがきついからねえ」やっと入れ終えたときに騎士(ナイト)が申します。「袋の中にはロウソクがいっぱい入ってるもんで」そして袋を鞍にぶらさげました。そこにはすでに、ニンジンの束や暖炉の金具や、その他いろんなものでいっぱいです。

 「きみの髪の毛は、しっかり頭にくっついてるといいけど」また動き出したときに、騎士は続けて申しました。

 「まあ、ごくふつうにくっついてますけど」とアリスは、笑いながら答えます。

 騎士は心配そうです。「それじゃじゅうぶんとは言えないな。だってここでは、風が実に ものすごく 強いんだよ。もうスープみたいに強いんだからね」

 「髪が吹き飛ばされないようにする計画は発明なさったんですか?」とアリスはきいてみました。

 「いやまだ。でも、髪の毛が落っこちないようにするための計画ならあるよ」

 「ぜひ聞かせてくださいな」とアリス。

 騎士は申します。「まず、棒を立てるよね。それから、髪の毛をそれに沿って、こう上向きにつたい上がらせるんだよ、果物の樹みたいに。さて、髪が落ちるのは、それが 下向きに ぶら下がっているからだろう―― 上向きに 落ちるものなんてないからね。こいつはぼくならではの発明による仕組みだよ。気に入ったら試してくれていい」

 あまり快適な仕組みじゃあなさそうね、とアリスは考え、数分ほどこのアイデアに頭をなやませつつ、だまって歩いていましたが、でもしょっちゅう立ち止まっては、かわいそうな騎士を助け起こしてあげなきゃなりませんでした。この騎士は、どう見ても馬に乗るのがへたくそです。


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