「びっくりさせよる!」と王さま。「気絶しそうじゃ――ハムサンドをもて!」 [イラスト: ヘイヤのサンドイッチ] そう言われて伝令は、アリスがわくわくして見守る中、首からぶら下がったふくろを開けるとサンドイッチを王さまにわたしました。王さまは、それをガツガツむしゃむしゃと食べました。 「サンドイッチもう一つ!」と王さま。 「もう干し草しか残ってませんぜ」と伝令は、ふくろをのぞきこんで申します。 「じゃあ、干し草」と王さまは、気絶しそうなひそひそ声で言いました。 干し草で王さまがかなり元気をとりもどしたのでアリスはホッとしました。「気絶しそうなときには、干し草はまたとないものじゃな」と王さまはむしゃむしゃ食べながらアリスに申します。 「つめたい水をかけるほうがいいと思うんですけれど。それとも気付け薬とか」とアリスは提案してみました。 「干し草より よい ものがないとは申しておらん。干し草のようなものは他にない、と申したのじゃ」と王さま。アリスとしても、あえてこれに反論する気はありませんでした。 「道でだれかおまえを追いしたか」と王さまは、もっと干し草をよこせと伝令に手を伸ばしながら申します。 「だれも」と伝令。 「いやまったく。こちらのお若いご婦人も、そいつを見たそうな。だからもちろんそのだれも、おまえほどは歩くのが遅くないわけじゃ」 「あっしだってがんばってるんでさぁ。だれも、あっしより大して速くは歩けないはずでっせ!」 「いやいややつに、それはできんじゃろ。もしできるなら、おまえより先にここに着いておるはずじゃ。でもそろそろおまえも息切れがなおったようだな。街で何が起きたか話すがよいぞ」
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