「まさにその通り。さてこんどの 『みじらしい』 というのは『みすぼらしくてみじめ』ってことであるな(ほら、これまたかばんなのだ)。それと 『ボショバト』 はやせたショボい鳥で羽がそこらじゅうに飛び出しておる――なんか歩くモップみたいなものを考えたらよろしい」 「それじゃ 『居漏(いろ)トグラ』 って? お手数ばかりおかけして本当に申し訳ないですけど」 「 『トグラ』 は緑のブタみたいなものだな。でも 『居漏(いろ)』 となると、わたしもよくわからん。たぶん『居場所から漏れた』を縮めたんであろう――つまりは迷子になった、というわけであるな」 「じゃあ 『ほさめる』 ってどういう意味?」 「うむ、 『ほさめ』 ってのは、ほえるのと口笛の中間で、間にくしゃみみたいなのが入ったものであるね。でも、いずれそれを実際に聞くこともあるだろう――森の奥なんかで――いったん聞いたら、もうそれで じゅうぶんすぎる くらいであるな。にしても、こんなむずかしいものをあんたに暗唱して聞かせたというのは、いったい何者かね」 「本で読んだんです。でも、これより ずっとやさしい詩も暗唱してもらいましたよ 、えーと――トゥイードルディー、のほうだったかな」 「詩となるとだねぇ」とハンプティ・ダンプティは、でっかい手を片方のばします。「そういう話になるんなら、 このわたしなら 、ほかのだれにも負けないくらい詩を暗唱してあげられるよ――」 「ああっ、そういう話にならなくてもいいんですけど!」とアリスはあわてて言って、ハンプティ・ダンプティが始めるのをやめさせようとしました。 ハンプティ・ダンプティは、アリスの発言をまったく無視してつづけました。「わたしがこれから暗唱する詩篇はだね、 あんたのためだけに書かれたものであるのよ」 アリスとしては、そういうことならこれは 聞くしかない と思いましたので、腰をおろし、「ありがとうございます」と言いました。ちょっと悲しそうに。
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