これはなかなか有望そうにきこえたので、アリスは最初の一節を暗唱しました。 それは煮(に)そろ時(じ)、俊(しゅ)るりしオモゲマたちが 「とっかかりはそのくらいで十分」とハンプティ・ダンプティがわりこみました。「むずかしいことばがたくさんある。 『煮(に)そろ時(じ)』 というのは、夕方四時のことであるな――晩ごはんのために、そろそろ 煮はじめる 時間である」 「それでしっくりきますね。じゃあ 『俊(しゅ)るり』 は?」 「うむ、 『俊(しゅ)るり』 は、『俊敏(しゅんびん)でぬるりとした』という意味。『俊敏(しゅんびん)』は『元気がいい』というのと同じことである。おわかりのように、かばんみたくなっておるわけ――二つの意味を一つのことばにつめこんであるのだ」 「それでわかりました」とアリスは考え深げにもうします。「じゃあ 『オモゲマ』 ってなに?」 「そう、 『オモゲマ』 は、まあアナグマのようなもんだ――トカゲみたいでもある――さらにはコルク抜きのようでもあるな」 [イラスト: オモゲマ、ボショバト、トグラが幅かりのまわりで] 「ずいぶんとへんてこな生き物なんですねえ」 「いやホント」とハンプティ・ダンプティ。「それと日時計の下に巣を作るのだね――それと、チーズを食べて生きておる」 「じゃあ 『環繰(わぐ)る』 と 『躯捩(くねん)する』 は?」 「 『環繰(わぐ)る』 のは、環球儀みたいにぐるぐるまわること。 『躯捩(くねん)する』 は、コルク抜きみたいに穴をグリグリと開けることである」 「じゃあ 『幅かり』 っていうのは、日時計のまわりの草地のこと、かしら?」と言ったアリスは、自分の賢さにわれながらおどろいてしまいました。 「もちろんそうである。 『幅かり』 と呼ばれるのはだね、そいつが手前にも奥にも横にも、ずっと幅をとってあるからで――」 「そしていたるところ、 葉ばかり だから?」とアリスは付け加えました。
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