No.54

この間ずっとトゥィードルディーは、いっしょうけんめいかさをたたんで、自分もその中にたたみこまれようとしていました。これは実に不思議なことだったので、アリスは怒っている兄弟のことをつい忘れてしまいました。でも、さすがのトゥィードルディーも、これはうまくいかずに、結局はかさにからまったままころんでしまい、頭だけがつきだすかっこうになりました。そしてそうやって転がったまま、口をぱくぱく、目をぱちくりさせています。「なんというか、魚以外のなにものでもないわよね」とアリスは思いました。「もちろん決闘するのには合意するよな?」とトゥィードルダムはもっと落ち着いた調子で申しました。

 「まあ仕方ないか」と相方は、かさからゴソゴソ這いだしながら、不機嫌そうに申します。「でも、 この子が 着付けをてつだってくれないとね」

 というわけで兄弟二人は、手に手をとって森の中へと向かい、しばらくしてから腕いっぱいにがらくたをかかえて戻ってきました――たとえばクッションや毛布、じゅうたんやテーブルクロス、お皿のカバーや石炭ばけつなど。「ピン留めとかひもを結んだりとか、じょうずだといいんだけど。これ全部、一つ残らずなんとかしてつけてもらわないと」とトゥィードルダム。

 あとでアリスの話によると、ほかのどんなことについてだって、これほどの大騒ぎなんか見たことない、とのこと――二人ともあーだこーだと文句ばかり――そしてこの二人が身につけたがらくたの量ときたら――さらに、ひもをむすんだりボタンをとめたりするので、すさまじく手がかかるのです――「いやぁ、もうなんというか、二人とも準備が整う頃には、古着のかたまりとしか言いようがなくなっちゃうはずだわ!」とアリスは、トゥィードルディーの首に石炭入れをゆわえてあげながら思いました。「頭を斬り落とされないようにするんだ」とは当人の言。そして、重々しくこうつけ加えます。

[イラスト: 決闘のために完全装備]

 

 


< back = next >
 < 目次 >