No.53

  「でも その外なら 降るかもしれないでしょ?」

 「かもね――雨の気分しだいで」とトゥィードルディー。「ぼくらとしては異議なし。対照的に」

 「身勝手な連中ね!」とアリスは思い、まさに「おやすみなさい」と言って二人を後にしようと思ったときに、トゥィードルダムが傘(かさ)の下からとびだして、アリスのうでをつかみました。そして「 あれが 見えるか?」と、気持ちがたかぶってのどがつまったような声で申します。同時に、目をいっしゅんでおっきく黄色くしながら、木の下にころがっている小さな白いものを、ふるえる指で示します。

 アリスは、その小さな白いものを慎重に調べてから申しました。「ただのガラガラよ。ガラガラ ヘビ じゃないからね」と、トゥィードルダムがこわがっているのかと思って、あわててつけ加えます。「ただの古いガラガラよ――すごく古いし、こわれてるし」

訳注:この「ガラガラ」というのは、赤ちゃんのあのガラガラではなくて、イギリスのサッカーの応援団なんかがよく使う、ふりまわすとギイギイ鳴るあの道具のことであるのだよ。あれは日本語でなんてゆーんだ?

[イラスト: ガラガラがこわれて怒る]

 「そうじゃないかと思ったんだ!」とトゥィードルダムは叫んで、足を踏みならし、もうれつに髪の毛をかきむしりだしました。「もちろん壊れてるよな!」そしてここでトゥィードルディーのほうをにらみつけます。トゥィードルディーは、すぐにすわりこんで、かさの下に隠れようとしました。

 アリスはトゥィードルダムのうでに手をのせて、なだめるように申しました。「古いガラガラのことで、そんなに怒らなくてもいいじゃないの」

 「でも古くないんだもん!」とトゥィードルダムは、前にも増して怒りくるって叫びました。「新品なんだよ――きのう買ったばっかなんだもん!――ぼくの新品の ガラガラが !!」ここで声は完全な金切り声になりました。

 


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