No.55

 「知ってるかい、これは決闘で起こり得るいちばん深刻な事態なんだよ――頭を斬り落とされるってのは」

 アリスは大笑いしてしまいましたが、機嫌を損ねないよう、なんとかごまかして咳きこんだふりをしました。

 「ぼくってすごく蒼ざめてる?」とトゥィードルダムが、ヘルメットのひもをしばってもらいにきて言います(ヘルメットと 呼んでは いましたが、それはどう見てもソース用のおなべにずっと似ていました。)

 「ええ――まあ――その、 ちょっと だけね」アリスは優しく答えます。

 「ぼくはいつもはとっても勇敢なんだ。でも、きょうに限っては、たまたま頭痛がしてるんでね」とトゥィードルダムは声を落としてつづけます。

 「 ぼくなんか 歯が痛いんだぞ! ぼくのほうがおまえより不利なんだからな!」とトゥィードルディーが、いまのせりふをもれ聞いてもうします。

 「じゃあ、二人ともきょうは闘わないほうがいいわよ」とアリスは、争いをおさめるいい機会だと思っていいました。

 「でも ちょっとくらいは 闘わないと。そんなに長くやんなくてもいいけど。いま何時?」とトゥィードルダム。

 トゥィードルディーは時計を見ました。「四時半」

 「六時まで闘って、それから晩ごはんにしよう」とトゥィードルダム.

 「しかたないか」と相方は、いささか悲しそうに言いました。「そして この子は 見てるといい――でも、 あんまり 近くにきちゃダメだよ」とつけ加えます。「ぼくは目に入ったものには、片っ端から斬りつけちゃうからね――すっごく興奮してきたときには」

 「そして ぼくは 届く範囲のものならなんでも斬りつけるんだぞ、見えようと見えまいと!」とトゥィードルダムがどなります。

 


< back = next >
 < 目次 >