No.50

 「あたし、セイウチがいちばん好きだな。だってあわれなカキたちのこと、 ちょっとは かわいそうと思ってあげたでしょ」とアリス。

 「でも、大工よりもいっぱい食べたんだよ。ハンカチを口にあてて、いくつ食べたかを大工に数えられないようにして。対照的に」とトゥィードルディー。

 「それ、ひどいわ! じゃあやっぱり大工がいちばん好き――セイウチほどたくさん食べなかったんなら」とアリスは憤然として言いました。

 「でも大工だって食べられるだけ食べたんだよ」とトゥィードルダム。

 これは悩ましい問題でした。しばらく考えこんでからアリスは口を開きました。「まったく!  どっちも ずいぶんといやな連中で――」ここでアリスは、ビクッとしてあたりを見まわしました。ちかくの森から、おっきな蒸気機関車(じょうききかんしゃ)の音みたいなものが聞こえてきたからです。アリスは、たぶん野獣じゃないかしらと思ったわけです。「このあたりって、ライオンとかトラとかいるのかしら?」アリスはびくびくしてたずねました。

 「ありゃただの赤の王さま(キング)のいびき」とトゥィードルディー。

 「おいで、ごらんよ!」と兄弟たちは叫んで、それぞれがアリスの手を一つずつにぎると、王さまの眠っているところまでつれてきました。

 「なんて 美しい 姿だと思わない?」とトゥィードルダム。


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