No.51


 アリスとしては、これに心底賛成はできませんでした。長い赤いナイトキャップをかぶって、王杓を持ち、みっともない山みたいに丸まってねっころがり、大いびきをかいているのです――それもトゥィードルダムが言ったように「頭がはずれそうなくらいの大いびき」です。

 「湿った草の上に寝てるなんて、カゼひいちゃうんじゃないかしら」アリスはとても配慮のいきとどいた女の子だったので、こう申しました。

 「夢を見てるんだよ。それで、なんの夢を見てると思う?」とトゥィードルディー。

 アリスは答えます。「そんなのだれにもわかんないわ」

 「いやぁ、 きみのこと だよ!」とトゥィードルディーは、勝ち誇ったように手を叩きながら叫びました。「そして王さまがきみのことを夢見るのをやめちゃったら、きみはどうなっちゃうと思う?」

 「別にいまのままここにいるわよ、もちろん」とアリス。

 「きみはちがうね!」とトゥィードルディーがバカにしたように切り返します。「きみはどこにもいなくなっちゃうんだよ。だってきみなんか、王さまの夢の中にしかいないモノじゃないか!」

 「あそこにいるあの王さまが目をさましたら、きみは――ボーン!――ロウソクみたいに消えちゃうんだよ!」とトゥィードルダムがつけくわえます。

 「消えるわけないでしょ!」アリスは怒って叫びました。「それにもし あたしが 王さまの夢の中にしかいないモノなら、そういう あなたたち はなんなのか、ぜひとも知りたいもんだわ!」

[イラスト: 夢見る赤の王さま]


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