No.49
『でもまさかぼくたちを』と叫ぶカキくんたちは、
みんなちょっと青ざめる、
『こんなに親切にしてくれたのに
それはなんともあんまりだ!』
『見事な夜だ』とセイウチが言う
『なんともすてきなながめじゃないか』
『出てきてくれてありがとう
なんとも優しい子たちだね!』
大工の答はただ一言
「パンをもう一切れ頼む:
そんな上の空はやめてほしいね――
二度も三度も言わせるな!』
[イラスト: カキはみんな腹の中]
『こんなペテンをするなんて
これはなんとも恥ずかしい』とセイウチ。
『こんな遠くに連れ出して
あんなに急いで歩かせて!』
大工の答はただ一言
『バターを厚く塗りすぎた!』
『かわいそうなきみたち』とセイウチ、
『心底同情してあげる』
セイウチ、嗚咽と涙に隠れつつ
選ぶはいちばん大きいカキばかり
ポケットからのハンカチで
涙流れる目を隠しつつ。
『おおカキ諸君』と大工が呼びかける。
『なかなか楽しい道中だった!
ぼちぼち帰るとしようかね?』
でもこれに対する返事なし――
そしてこれってどこが変?
だって一つ残らず腹の中」
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