「ふーん。でももし先生が『ちょっと!』とだけしか言わなかったら、もちろん授業もちょっとしか出なくていいんだよね。いまのはだじゃれだよ。 きみが 言ったんならよかったのに」 「どうして あたしが 言ったらよかったと思うわけ? ずいぶん寒いだじゃれなのに」 でもブヨは深いため息をついただけで、おっきな涙が二つ、ほっぺたを転がりおちてきました。 「そんなに不幸になるなら、だじゃれなんか言っちゃだめよ」とアリス。 そこにまた、あの憂鬱で小さなため息がきて、今回は哀れなブヨも、ため息で自分をはきだしきってしまったようです。アリスが目をあげると、小枝にはなにも目に入るものはなくて、アリスとしてもじっとすわりっぱなしでちょっと寒くなってきたので、立ち上がって歩き出しました。 じきに開けた野原にやってきまして、その向こう側に森があります。さっきの森よりずいぶん暗くて、アリスとしてもそこに入っていくのは ちょっとだけ こわかったんですが、考え直して、森に入ることに決めました。「だって、絶対に 戻るのは いやだもの」と思ったし、それに八升目につくには、これが唯一の方法でしたから。 「これが、名前のない森ね」とアリスは考えこみました。「入ったら、 あたしの 名前はどうなっちゃうんだろう。名前を全部なくしちゃうのはいやだな――そうなったら別の名前がつけられるだろうし、どうせひどい名前になるに決まってるもの。でも、そうしたらあたしのもとの名前をもらった生き物を探すのはおもしろいだろうな! 迷子の犬を探す広告とかみたいでしょう―― 『「ポチ」と呼ぶと答えます:しんちゅうの首輪つき』 ――だれかが返事するまで、会うものを片っ端から『アリス』と呼ぶのよ! でも、賢ければ呼ばれても返事なんかしないと思うけど」
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