No.31

女王さまがアリスを木にもたれさせてくれます。「さあ、ちょっと休んでよろしい」と親切そうに言います。

 アリスはあたりを見まわして、おどろいてしまいました。「まあ、まるでずっとこの木の下にいたみたいだわ! なにもかももとのまま!」

 「もちろんそうだとも。ほかになりようがあるとでも?」と女王さま。

 アリスは、まだちょっと息をきらしていましたが、答えました。「ええ、 わたくしどもの 国では、ふつうはどこかよそにたどりつくんです――もしいまのわたしたちみたいに、すごく速く長いこと走ってたら」

 「グズな国じゃの!  ここでは だね、同じ場所にとどまるだけで、もう必死で走らなきゃいけないんだよ。そしてどっかよそに行くつもりなら、せめてその倍の速さで走らないとね!」

 「それは遠慮したいです、後生ですから!」とアリス。「ここにいられれば十分満足ですから――ただ、確かに すごく 暑くてのどがかわいちゃって!」

 「 それなら 気に入るはずのものがあるぞえ!」と女王さまはとても親切そうに言って、ポケットから小さなはこを取り出しました。「ビスケットをいかが?」

 アリスは、ことわるのも失礼だわと思いましたが、でもそんなものがほしいとは、まるで思いませんでした。そこでそれをもらって、できるだけ食べようとしました。それは すさまじく 乾燥していまして、だから生まれて初めてというくらい、のどにつまって窒息しそうになったほどです。

 「おまえがそうやって一息ついておる間に、わらわはちょいと寸法を採るとしようかね」と女王さま。そしてインチごとに印がついたリボンをポケットから取りだして、地面を測りはじめ、あちこちに小さなペグを差しこみはじめました。

 「二ヤードのおしまいにきたら」と女王さまは、ペグをさして距離をしるします。「道順を教えてあげるとしよう――ビスケットをもう一ついかが?」


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