No.14

  [イラスト: チェスの駒たち]

 そのとき何かがアリスの背後のテーブルでキイキイ声をあげはじめました。ふり かえるとちょうど、白のポーンが転がって足をバタバタさせだすところでした。こ れからどうなるんだろうと、アリスはわくわくしながらながめています。  「わが子の声がする!」と白の女王さま(クイーン)は叫んで王さまの横をすご い勢いでかけぬけます。それが勢いよすぎて、王さま(キング)は灰の中につきた おされてしまいました。「かわいいリリーちゃんや! 高貴な子ネコちゃんや!」 そして女王さま(クイーン)は、猛然と暖炉の囲いをよじのぼりだしました。  「高貴だかホウキだか知らんが!」と王さま(キング)は、たおれたときにぶつ けた鼻をさすっています。まあちょっとは女王さまに腹をたてるのも仕方ないでし ょう。だって王さまは頭のてっぺんからつま先まで、灰まみれになっちゃっていた のですから。  ぜひともお手伝いしたかったし、それにかわいそうなリリーちゃんが、ひきつけ を起こしそうなほど泣き叫んでいたもので、アリスはいそいで女王さまをつまみあ げると、テーブルの上のそうぞうしい赤ちゃん娘の横に置いてあげました。  女王さまは息をのんで腰をぬかしてしまいました。空中を高速で移動したので、 息がつけなくなって、しばらくはだまってリリーちゃんを抱きしめるばかりです。 ちょっと息がつけるようになると、女王さまはすぐに、まだ灰の中でふくれっつら をしてすわっている白の王さま(キング)に呼びかけました。「火山にご注意 を!」

 


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