No.13

[イラスト: 鏡の向こうへ……]  

それからアリスはあたりを見まわし始めましたが、もとの部屋から見えたもの は、とっても見なれたつまらないものばかりだけれど、それ以外の部分はとことん ちがっているのがわかりました。たとえば暖炉のとなりのかべにかかった絵は、ど れも生きているみたいで、暖炉の上のすぐそこにある時計だって(ごぞんじのよう に、鏡の中では裏っかわしか見えないよね)小さなおじいさんの顔をしていて、ア リスににやっとしてみせます。  「こっちのお部屋は、むこうのほど片づいてないのね」とアリスは思いました。 炉端に燃えがらがころがって、そこにチェスの駒がいくつか転がっていたのが見え たからです。でも次のしゅんかん、「あら!」というオドロキの声とともに、アリ スはよつんばいになってそれを見つめていました。チェスの駒が、それぞれ対にな ってうろうろ歩いているのです!  「こっちには赤の王さま(キング)と赤の女王さま(クイーン) ね」とアリスは 言いました(ただしこわがらせるといけないので、ひそひそ声でね)。「そしてあ っちには白の王さま(キング)と白の女王さま(クイーン)が、シャベルのはしに すわってるわ――こっちではキャッスル二つがうでを組んで歩いてるし――どうも あたしのこと、聞こえないみたい」と、もっと頭を近くまで下げました。「それ に、あたしが見えないのはまちがいなさそう。どうも目に見えなくなった感じ― ―」

 


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