No.105

 「 陛下は 計算はおできになるんですか?」とアリスは、いきなり白の女王さまに向き直って申しました。こんなにあれこれ粗さがしをされるのがいやだったからです。

 女王さまは息をのんで、目を閉じました。「もし時間さえいただければ、足し算はできますのよ――でも引き算は、 どんな場合でも できませんの!」

 「もちろん A B C はわきまえておるな?」と赤の女王さま。

 「それはもちろんまちがいなく」とアリス。

 「わたくしもですのよ」と白の女王さまがささやきます。「わたくしたち、いっしょに暗唱したりしましょうねえ。それで、これは秘密なんですけれど――わたくし、一文字だけの単語なら読めますのよ!  これって なかなかすごくございませんこと? でも、あまりがっかりなさらないでくださいな。あなたもいずれ追いつかれますわよ」

 ここで赤の女王さまがまたしゃべりだします。「実用問題なら答えられるかの? パンの作り方は?」

 これには、アリスは大喜びで叫ぶように返事をいたしました。「あ、 それなら 知ってます! えーと、まず強力粉を用意して――」

 白の女王(クイーン)さまがたずねました。「強力とおっしゃいましても、どのくらいお強うございますの? ライオンくらいですかしら、それともゾウくらいかしらねえ?」

 「いえ、それはそういう強さじゃなくて、なんか小麦粉の種類の一種みたい――」

 「見たいとおっしゃいましても、何がごらんになりたいのかしら? そんないろいろ話をお飛ばしになると、こちらといたしましてもねえ」と白の女王 (クイーン) さま。

 「頭をあおいでやろう!」赤の女王さまが心配そうに割り込みます。「考えすぎで、熱っぽくなってるはずじゃ」そこで二人は葉っぱをたくさん使って、がんばってアリスをあおぎはじめて、やがてアリスはやめてくださいとお願いしなくてはなりませんでした。髪の毛があちこち吹き流されてたいへんだったからです。

 赤の女王さまが申します。「これでまた大丈夫だろうて。おまえ、語学はできるかえ? あっちょんぶりけをフランス語で言うと?」

 


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