No.104

「じゃあ足し算はおできになるわねえ」と白の女王さま。「一足す一足す一足す一足す一足す一足す一足す一足す一足す一足す一足す一はいくつ?」

 「わかりません。途中でついてけなくなっちゃって」とアリス。

 「足し算はできない、と」と赤の女王が割り込みます。「引き算はできるかえ? 八引く九」

 「八から九を引くのは無理です、そうでしょう」アリスは待ってましたとばかりに答えます。「でも――」

 「引き算もおできにならないのねえ」と白の女王さま。「じゃあわり算はいかがかしら? パンをナイフで分割すると――答えはなあに?」

 「それはたぶん――」とアリスが言いかけたところで、赤の女王さまがかわりに答えました。「バターパンだよ、もちろん。引き算をもう一つやってみるがいい。犬から骨をとったら、なにが残る?」

 アリスは考えました。「骨は残らない、わよねえ、もちろん。だって取るんだから――そして犬も残らないでしょう、あたしにかみつきにくるもの――そしたらあたしだってぜったい残らないわ!」

 「じゃあ何も残らないと思うわけじゃな?」と赤の女王さま。

 「それが答えだと思います」

 「ちがうな、毎度ながら」と赤の女王さま。「犬の正気が残る」

 「でもいったいどうして――」

 「やれやれ、少しは考えるがよいぞ!」と赤の女王さまが叫びます。「骨をとられたら、犬は怒って正気を失うであろうが、え?」

 「そうかもしれませんわねえ」アリスは慎重に答えました。

 「そうしたら、犬が去ったら、正気のほうがあとに残っているわけじゃろうが!」女王さまは、勝ち誇ったように叫ぶのでした。

 アリスは、なるべく重々しい声を出そうとしました。「残らずに別の方向に向かうかもしれないじゃないですか」でも、ついつい考えてしまうのでした。「まったく、どうしてこんな、とんでもなくわけのわかんない話をしてるんだろう!」

 「この子、計算はカケラもできないときた!」と女王さまたちは声をあわせ、思いっきりそれを強調してみせました


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