No.103

「まさしくその通り、であろうが」と赤の女王さまがアリスに申しました。「いつも正直におっしゃい――口を開く前によく考えて――そしてあとで書き留めておくこと」

 「あたしだって別に本気でそんな――」とアリスが切り出しましたが、赤の女王さまがそれをすぐさまさえぎります。

 「いまそのことで苦情を申したばかりであろうが! ちゃんと 本気でなくては いかんのじゃ! 本気なしの子供なんて、なんの役もたたないであろう。冗談にすら、多少の本気はあるべきだし――そして子供は、願わくば冗談よりはだいじであってほしいものだがね。おまえだって、たとえ両手を使ってみても、それを否定することは能うまい」

 「あたし、手で否定したりしません」アリスは反論しました。

 「だれもするなどとは申しておらぬわ。単に、使っても否定はできないと申したのじゃ」と赤の女王さま。

 「その子はねえ、そういうお年頃なんでございますよ。 なにかを 否定したくてしょうがないんだけれど――でも、何を否定していいかわからない、という!」と白の女王さま。

 「性悪で始末におえない気質じゃね」と赤の女王さまが述べます。そして、一分かそこら、とても居心地の悪いだんまりが続きました。

 だんまりを破ったのは赤の女王さまで、白の女王さまにこう申しました。「本日午後の、アリスの晩餐パーティーにご招待しましょう」

 白の女王さまは弱々しくほほえみました。「ではわたしも陛下をご招待いたしますわ」

 アリスが申します。「あたし、自分が晩餐パーティーをやることになってるなんて、ぜんぜん知りませんでした。でも、もしあるなら、お客様をご招待するのは、 あたしの はずだと思うんですけれど」

 「それをやる機会は与えてやったのじゃがの、でもおまえ、あえて申せばまだ礼儀作法の授業はあまり受けておらぬであろうが」

 「礼儀作法は、授業で教わるものじゃありません。授業では計算とか、そういうのを教えるんです」とアリス。

[イラスト: アリス女王の試験]


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