No.102 第 9 章 アリス女王
「まあ、これは たしかに 豪勢だわ!」とアリス。「こんなにすぐに女王さまになれるとは思わなかった――そして女王陛下、それならあえて申し上げましょう」ときびしい調子で続けます(アリスはいつだって、自分をしかるのがちょっと好きなのでした)。「そんなふうに、草の上でゴロゴロしてるなんて通りませんよ! 女王さまってもっと威厳がないとダメなんですからね!」 というわけで、アリスは立ちあがって歩き回ってみました――さいしょは、王冠が脱げちゃうんじゃないかと思って、ちょっとぎこちなかったのですが、でもだれも見ている人はいないし、と思って自分を安心させました。そして、またすわりながらこうつぶやきました。「それにもしあたしがほんとうに女王さまなら、いずれこれも立派にできるようになるはずよね」 なにもかも、すごくへんてこに起こっていたので、気がつくと赤の女王さまと白の女王さまが、右と左の間近にいつの間にかすわっていても、ぜんぜんおどろきませんでした。いつのまにやってきたんだか、ぜひともきいてみたいとは思いましたが、でもちょっと失礼なんじゃないかな、とこわかったのです。でも、たぶん試合が終わったのか聞いてみても、いけないことはないかな、と思いました。『あの、ちょっと教えていただけないでしょうか――』おずおずと赤の女王さまを見て口を開きます。 「話しかけられるまで口を開くんじゃない!」女王さまは、ぴしゃりとアリスを制しました。 「でも、もしみんながその規則どおりにしたら、そして自分も話しかけるまで口を開かなかったら、そして相手もいつもこっちが口を開くのを待っていたら、ほら、だれも何も言わなくなっちゃって、それで――」アリスはいつだって、ちょっとした議論は大好きなのでした。 女王さまは叫びます。「ばかばかしい! 子供よ、わからぬのか――」ここで顔をしかめて、せりふがとぎれました。そしてしばらく考えこんでから、急に話をそらしました。「さっきの『もしあたしがほんとうに女王さまなら』というのは、どういう意味だえ? なんの権利があって女王を名乗る? しかるべき試験に合格するまでは、女王にはなれぬののだからな。そして、ことわざにも言うとおり、試験は急げ。すぐ始めるとしよう」 「『もし』って言っただけです!」かわいそうなアリスは、あわれっぽい調子でうったえました。 女王さま二人は顔を見合わせて、そして赤の女王さまが、ちょっと身震いしながら述べます。「この子は、自分が『もし』と言っただけだと述べておるが――」 「でもそれよりはずっといろんなことを発言しましたわよね!」と白の女王さまが、手をもみくちゃにしながらうめきます。「ほんとうにもう、とてもじゃないけどいろいろと!」
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