No.100

[イラスト: 門にすわったおじいさん]

でもそのときぼくが考えてたのは
練り粉を食事にして
毎日毎日そうやって
ちょっとずつ太ること。
ぼくはおじいさんが青くなるまで
左右にゆすりまわし
『ねえ、どういう暮らしをしているの?
どんなお仕事か教えてよ!』と叫ぶ。

『わしはまばゆいヒースの中
タラの目を探す
そして静かな夜に
それをチョッキのボタンに仕上げ
それは金でも売らないし
ピカピカ銀貨でも売りゃしない
お代は銅貨たったの半ペニー
それだけで九個も買えるのじゃ』

『ときにはバターロールを探して地面を掘り
あるいはトリモチ枝をカニに仕掛け
ときにはハンサム馬車の車輪を求め
草しげる小山を探す。
そしてわしはそのようにして』(とここでウィンク)
『富を得ておりまして――
そして貴殿の尊き健康を祈って
喜んで一杯おごられましょうぞ』

やっとおじいさんの話がきこえたのは
メナイ橋をワインで煮立て
さびないようにするために
仕掛けをついに完成させたから。
富の得かたを教えてくれて
ぼくはおじいさんにお礼を述べた
でもそれは主に、ぼくの尊き健康に
乾杯したいという願いのためだったけど。

そしていま、ふとしたひょうしに
指をのりにつっこんだり
いっしょうけんめい右足を
左のくつにおしこんだり
すごく重たいものを
つま先に落としたりするたびに
ぼくはかつて知っていたあの
おじいさんを思い出しては泣く――

その姿やさしく、口振りのろく
髪は雪よりも白くて
顔はまるでカラスみたいで
目はストーブみたいにランランと
心労で胸がいっぱいみたいで
体を前へ後ろへとゆすり
口に練り粉が詰まったみたいに
ぶつぶつ小声でつぶやく
バッファローみたいないびきの

あのずっと昔の夏の午後
門にすわってたあのおじいさんを」


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