No.95

 おれが子どものころに暗唱したのとは、ちがってるなあ」とグリフォン。

 「うん、ぼくははじめてきくけど、でもわけわからないデタラメにしかきこえないわよ」とにせウミガメ。

 アリスはなにも言いませんでした。すわって、顔を両手でおおって、もうこの先二度と、なにもふつうにはおきないのかしら、と考えていました。

 「説明してもらえないかしらぁ」とにせウミガメ。

 「説明できないよ、この子」とグリフォンがいそいで言います。「つぎんとこ、やってごらん」

 「でもつま先はどうなるのぉ? だってロブスターが、どうやったらそれを鼻でそとに向けるのぉ、ねえ?」

 「おどりの最初のポジションよ」とアリスは言いました。が、なにもかもとんでもなく頭がこんがらがっていて、話題を変えたくてしかたありませんでした。

 「つぎんとこ、やってごらん」グリフォンが、まちきれないようすで言いました。「出だしは『とおりすがりにそいつの庭で』だよ」

 アリスはとてもさからったりできませんでしたが、でもぜったいにぜんぶめちゃくちゃになるな、と思ったので、ふるえる声でつづけました:

* * * * * *

「「とおりすがりにそいつの庭で、わたしが片目で見たことにゃ
ヒョウとオウムがパイをわけ――
ヒョウがたべたはパイ皮、肉汁と肉
オウムの分け前、お皿だけ。

パイがおわるとおなさけに
オウムはおさじをもちかえり
ヒョウはうなってナイフとフォーク
夕餉(ゆうげ)のしめは、あわれな――」

* * * * * *

 


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