No.94

 そこでアリスは、白うさぎを見たところから自分の冒険の話をはじめました。最初はちょっと不安でした。だって二匹の生き物がすっごく近くによってきて、アリスの左右について、お目目とお口をすんごくひらいていたからです。でも、先にすすむうちに、ゆうきが出てきました。きき手はずっとなにも言いませんでしたが、いもむしに『ウィリアム父さんお歳をめして』を暗唱して、ことばがぜんぶちがって出てきたところにくると、にせウミガメが思いっきり息をすいこんで言いました。「それはじつにおもしろいわぁ」

 「うん、なにもかもすっごくおもしろい」とグリフォン。

 「ぜんぶちがって出てきたのねぇ」とにせウミガメは考えこんでくりかえします。「ぼく、この子がここでなにか暗唱するのをきいてみたいわ。やれって言ってやってよ」とにせウミガメはグリフォンのほうを見ました。まるでグリフォンがアリスに命令する力があるとでも思ってるみたいです。

 「立って『不精者(ぶしょうもの)の宣言』を復唱するんだ」とグリフォン。

 「まったくここの生き物って、人に命令してばかりで、お勉強の復習ばかりさせるんだから。いますぐ学校にもどったほうがましかも」でもアリスは立ちあがって復唱をはじめました。でも頭がロブスターのカドリーユおどりでいっぱいだったので、自分がなにを言ってるのかまるでわからず、おかげでことばもずいぶんへんてこになっちゃったのです。

* * * * * *

「ロブスターの宣言を、わたしが聞いたところでは
『わしはこんがり焼かれすぎ、髪に砂糖をまぶさなきゃ』
アヒルがまぶたでするように、ロブスターは鼻ヅラで
ベルトとボタンを整えて、つま先そとに向けまする」

「砂がすっかりかわいたら、ヒバリまがいに大ごきげん
サメを小ばかにしてまわる
でも潮がみちてサメがくりゃ
 声はおびえてふるえます。」

* * * * * *

 


< back = next >
 < 目次 >