No.74

 「首なんか切らせないわ!」とアリスは、近くにあったおっきな花びんに庭師たちを入れてあげました。兵隊さん三名は、一分かそこらうろうろしてさがしていましたが、だまってほかのみんなのあとから行進してきます。

 「あやつらの首はちょん切ったか!」と女王さまはさけびます。

 「あのものどもの首は消えてしまいました、女王陛下どの!」と兵隊たちがさけんでこたえました。

 「よろしい! おまえ、クロケーはできる?」

 兵隊たちはだまってアリスのほうを見ました。この質問が明らかにアリスむけだとでもいうように。

 「ええ!」とアリス。

 「ではおいで!」と女王さまがほえ、アリスは行列にまじって、これからどうなるのかな、と心から思いました。

 「いやなんとも――よいお天気ですな」とびくびく声がよこできこえました。となりを歩いていたのは白うさぎで、こちらの顔を心配そうにのぞきこんでいます。

 「ええとっても」とアリス。「――公爵夫人はどちら?」

 「これうかつなことを!」とうさぎは、小さな声ではや口にもうします。こう言いながらも、かたごしに心配そうにのぞいて、それからつま先だちになって、アリスの耳近くに口をもってきてささやきました。「公爵夫人は死刑宣告をうけたのですよ」

 「どうして?」

 「いま、『まあかわいそうに』とおっしゃいましたか?」とうさぎ。

 「いいえ、言ってませんけど。ぜんぜんかわいそうだと思わないし。『どうして?』っていったんです」

 「女王さまの横っつらをなぐったんです――」とうさぎが言って、アリスはゲラゲラわらってしまいました。うさぎがちぢみあがってささやきます。「ああおしずかに! 女王さまのお耳にとどきます! じつはですな、公爵夫人はいささかおくれていらっしゃいまして、女王さまがそこで――」

 


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