No.75

 「位置について!」と女王さまが、かみなりのような声でどなりまして、みんなあちこちかけまわりだして、おたがいにごっつんこしてばかりいます。でも、一分かそこらでみんなおちついて、試合開始です。アリスは、こんなふうがわりなクロケー場は見たこともないと思いました。そこらじゅう、うねやみぞだらけ。玉は生きたアナグマで、マレットは生きたフラミンゴ、そして兵隊さんたちがからだをおって四つんばいになって、ゲートをつくっているのです。

 アリスがまず一番くろうしたのは、フラミンゴをじっとさせておくことです。フラミンゴのからだは、なんとかうまいぐあいにうでの下におさめて、足をたらすようにしたのですけれど、でもだいたい、ちょうど首をきちんとのばさせて、その頭でアナグマをたたこうとしたとたんに、フラミンゴはぐいっと首をねじって、アリスの顔を見あげます。そしてその顔が、いかにもわけわかりませんという顔つきなので、ついふきだしてしまいます。さらに頭を下げさせて、もう一回やってみようとすると、アナグマがまるまるのをやめて、もぞもぞあっちへいってしまおうとしているので、すごく頭にきます。おまけに、アナグマをむかわせたい方向には、たいがいうねやみぞがあったし、それに四つんばいの兵隊さんたちも、しょっちゅうおきあがってはクロケー場のよそにうろうろしています。アリスはじきに、こいつはじつにむずかしいゲームだぞ、という結論にたっしました。

 参加者たちはみんな、順番をまったりしないで、いっぺんに玉をうっていて、そのあいだずっといいあらそっては、アナグマをとりあってけんかしてます。そしてじきに女王さまはカンカンに怒って、そこらじゅうズシズシうろついては、「あやつの首をちょん切れ!」だの「こやつの首をちょん切れ!」だの一分に一度くらいはわめいています。

 アリスはとってもいやーな気持ちになってきました。そりゃたしかに、自分はまだ女王さまとはもめていませんけれど、でもそれがすぐにでもおきかねないのはわかります。「そうなったらあたし、どうなっちゃうの? ここではみんな、首切りが大好きなんだもの。まだ生きてる人がいるほうが不思議ってもんだわ!」


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