No.102

 ちょうどこのとき、アリスはとっても変な気分になりました。いったいなんだろうとずいぶん首をかしげたのですが、やがてなんだかわかりました。またおっきくなりだしてるのです。最初は、立ってここを出ようかと思いました。でもやっぱり考え直して、い場所があるうちはここにいようと決めました。

 「そんなぎゅうぎゅう押すなよぅ。息ができないよぅ」ととなりにすわってたヤマネがいいました。

 「しょうがないでしょう。おっきくなってるんだから」とアリスはとってもよわよわしくいいました。

 「なにもこんなところでおっきくならなくても」とヤマネ。

 「バカなこといわないでよ。あなただって、おっきくそだってるんですからね」アリスはもうちょっと強くいいました。

 「うん、でもぼくはふつうにおっきくなってるんだからね。そんなとんでもないはやさじゃないよ」そしてヤマネは、プンプン怒って立ちあがると、法廷をよこぎって反対側にいってしまいました。

 この間ずっと、女王さまは帽子屋を見つめるのをやめませんで、ヤマネが法廷をよこぎったと同時に廷吏の一人に申します。「前回のコンサートの歌い手一覧をもってまいれ!」これをきいて、ひさんな帽子屋さんはガタガタふるえすぎて、くつが両方ともゆすりぬげてしまいました。

 「おまえの証言をのべよ」と王さまは怒ったようにいいます。「さもないと、ビクビクしているかにかんけいなく、おまえを処刑させるぞ」

 「あっしは貧しいものでして、国王陛下」と帽子屋さんはふるえる声できりだしました。「――そしてお茶もまだで――もう一週間ほどもなんですが――んでもって、バターパンもこんな心もとなくなってきて――それでキラキラの木が――」

 「キラキラのなんともうした?」と王さま。

 「ですから木からはじまったんでして」と帽子屋さんはこたえます。


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