No.101

 「では判決をまとめるがよい」と王さまは陪審に言いました。

 「まだです、まだです!」うさぎがあわてて止めます。「それより先に、たくさんやることがあります!」

 「最初の証人をよべ」と王さま。そして白うさぎがラッパを三回ふきならして、さけびました。「証人だい一号!」

 最初の証人は、あの帽子屋さんでした。片手にお茶わん、片手にバターパンをもっています。「国王陛下、こんなものをもってきやして、すまんこってす。でもよばれたときに、まだお茶がすんでなかったもんでして」

 「すんでいたはずだが」と王さま。「いつからはじめた?」

 帽子屋さんは三月うさぎのほうを見ました。三月うさぎは、ヤマネとうでをくんで、あとからついてきたのです。「たしか三月の十四日だった、と思うけど」

 「十五だよ」と三月うさぎ。

 「十六」とヤマネ。

 「書いておけ」と王さまは陪審にいいました。そして陪審員は、ねっしんに、石板に日づけを三つとも書いて、それからそれを足して、そのこたえをこんどはシリングとペンスになおします。

 「帽子をとりなさい」と王さまが帽子屋さんにもうします。

 「こいつぁあっしのもんじゃございませんで」と帽子屋さん。

 「ぬすんだな!」と王さまはさけび、陪審のほうを見ると、みんなすぐにそのじじつをメモします。

 「こいつぁ売りものでさぁ。自分の帽子なんかもってませんや。なんせ帽子屋、ですからね」と帽子屋さんは説明します。

 ここで女王さまがめがねをかけて、帽子屋さんをじっとながめました。ながめられた帽子屋さんは、青ざめてヒクヒクみぶるいしてます。

 「証言をするがよい。それと、そうビクビクするな、さもないとこの場で処刑させるぞ」

 こういわれても、証人はちっともげんきになりません。あいかわらずもじもじしながら、おどおどと女王さまのほうを見て、混乱しすぎてバターパンのかわりにお茶わんのほうをかじってしまいました。


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