No.8

そうすると、すぐに地面へ上る道が開きました。そして、あっというまに、もう自分の家の戸口まで帰っていました。お母さんがアラジンが帰ったので、涙を流してよろこびました。アラジンもお母さんにだきついて、何度も何度もキッスしました。それから、お母さんにこの間からのいちぶしじゅうを話そうとしましたが、お 腹 ( なか ) がぺこぺこでした。
「お母さん、何かたべさせてくださいな。私はお腹がぺこぺこで死にそうなんです。」と、アラジンが言いました。
  お母さんは、
「ああ、そうだろうとも、ねえ。だがこまったよ、もう家の中には、少しぽっちの 綿 ( わた ) よりほかには何にもないんだよ。ちょっとお待ち、この綿を売りに行って、そのお金で何か買って来てあげよう。」と、言いました。
  するとアラジンは、
「お母さん、待ってください。いいことがあります。綿を売るよりも、この、私の持って帰ったランプをお売りなさいな。」と言って、あのランプを出しました。
  けれども、ランプは大へん古ぼけていて、ほこりまみれでした。少しでもきれいになったら、少しでも高く売れるだろうと思って、お母さんはそれをみがこうとしました。
  しかし、お母さんが、そのランプをこするかこすらないうちに、大きなまっ黒いおばけが、 床 ( ゆか ) からむくむくと出て来ました。ちょうど、けむりのように、ゆらゆらとからだをゆすりながら、頭が天じょうへとどくと、そこから二人を見おろしました。
「ご用は何でございますか。私はランプの家来でございます。そして私はランプを持っている方の言いつけ通りになるものでございます。」と、そのおばけが言いました。


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