No.8

令嬢はなおも、愛情を(彼女が想うままに)自らに語り続けた。ロミオがロミオであり、モンタギュー家の一員であることをなじり、彼が他の名前であってくれればよかったのにと言い、その憎い名前は捨ててしまえばいい、名前は本人の一部ではないのだから、捨ててしまって、かわりに私のすべてをとって欲しいと言った。

 このような愛の言葉を聞いて、ロミオはもう我慢できなかった。ジュリエットの告白を、空想のものでなくて、本当に彼に話しかけたものであったように答えて、もしあなたが、ロミオという名前が気に入らないのなら、もうぼくはロミオではない、恋人とでも何とでも好きなように呼んでくれ、と言った。

 ジュリエットは、庭に男の声がしたので驚いた。はじめ、夜の闇に隠れて彼女の秘密を聞いたのが誰なのか分からなかった。しかし彼がもう一度話しだしたとき、ロミオが語る言葉をそれほど耳にしたわけでもないのに、恋人の耳は鋭いもので、すぐにその人がロミオだと分かった。ジュリエットは、ロミオが果樹園の塀にのぼって危険を冒していることをいさめた。というのは、もしジュリエットの親類がそこにいるロミオを見つけたら、モンタギュー家の一員ということで殺されるに決まっているからだ。


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