No.32

長いこと争いあってきた2人の老公は、もう仇敵ではなくなった。昔のことは子どもたちの墓に埋めてしまおう、ということになったのだ。キャピュレット卿は、モンタギュー卿に対して“兄弟”と呼びかけ、その手を与えてほしいと言った。若い2人の結婚を持って、これから仲良くしていこう、と申し出ているみたいだった。そして、(和解のしるしとして)モンタギュー卿の手を頂ければ、娘の寡婦産[#注1]として欲しいものは他にないのだ、と言ったのである。しかし、モンタギュー卿はもっとたくさんさしあげましょうと申し出た。ジュリエットのために純金の像を建ててあげたいのです、ヴェロナの町が続くかぎり、その立派さ、その出来映えを尊ばれる像として、まことの貞節を示したジュリエットの像以外にはありませんからな、ということだった。キャピュレット卿は、ロミオのために別の像を建てよう、と言った。

 こうして、2人のかわいそうな老公たちは、万事手遅れになってしまったのち、相手に好意を持っているのだということを示し始めたのだ。過去において、両家があまりに激しく怒り、憎んできたのであるから、2人の子ども(両家の争いと不和の哀れな犠牲者となった)が恐るべき最後をとげなければ、この名家同士の憎悪と嫉妬《しっと》を取り除くことができなかったのである。

 

[#注1]寡婦給与のこと。夫の死後妻の所有に帰するよう定められた土地財産。

 


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