No.21

 ロミオは心に重荷を抱えたまま愛妻と別れた。彼は、マンテュアから毎日、1時間おきにでも手紙を書くと約束した。しかし、ロミオが寝室の窓から地面へと降りていくときに、ジュリエットは悲しい予感におそわれた。ロミオが墓の中にある死体に見えたのだ。ロミオもまた不安につつまれた。しかし、今やロミオは急いでその場を離れなければならなかった。夜が明けてのち、ヴェロナの城壁内で見つかれば殺されてしまうからだ。

 このことは、不幸な星の元に生まれついた恋人たちの身にふりかかる悲劇の始まりにすぎなかった。ロミオが去っていく日もたたぬうちに、キャピュレット老公がジュリエットに縁談を持ちかけたのだ。すでに結婚しているとは夢にも思わずに、老公はジュリエットのために夫となる人を選んだ。その人はパリスという若くて立派な貴族であった。ジュリエットがロミオと出会っていなければ、彼こそジュリエットにとってもっともふさわしい求婚者だったろう。

 


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