一角獣(ユニコーン)は夢見るようにアリスを見つめて言いました。「子供、なんかしゃべれ」 アリスは、口を開きながらも口元がゆるむのをおさえられませんでした。「ねえ知ってた、あたしのほうもずっと、一角獣(ユニコーン)って空想上の怪物だと思ってたのよ! 生きてるのを見るのはこれが初めて!」 「ふーむ。じゃあ、こうしてお互いに相手を見たことだし、あんたがおれの実在を信じてくれれば、おれもあんたの実在を信じよう。取引成立、かな?」と一角獣(ユニコーン)。 「ええ、一角獣(ユニコーン)さんさえよければ」とアリス。 一角獣(ユニコーン)は、アリスから王さまのほうに向き直りました。「おい、じいさん、すももケーキを出してくれよな。あんたの黒パンはいただけないぜ」 「はいはい――わかったわかった!」と王さまはつぶやいて、 ヘイヤに合図しました。「袋を開け!」とささやきます。「急いで! そっちじゃない――そっちは干し草しか入ってない!」 ヘイヤ は袋からでかいケーキを取り出して、持っててくれとアリスにわたし、こんどはお皿と包丁を取り出しました。こんなにいろいろ、どうやってあの袋から出てきたものやら、アリスには見当もつきません。まるで手品みたいだわ、とアリスは思いました。 [イラスト: 空想上の怪物女の子]
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