No.72

 (歳のはなしはもういい加減たくさんだと思ったのです。そして話題を順番に選ぶというのがほんとうなら、こんどは自分の番だ、とアリスは考えました。)「もとい」と考え直して訂正します。「きれいなチョーカーですね、と言うべきだったかしら――いいえ、やっぱりベルト、じゃなくて――あらごめんなさい!」アリスはがっかりして付け加えました。ハンプティ・ダンプティはすっかり怒ってしまったようで、別の話題にすればよかったとアリスは後悔しはじめたのです。「まったく、どこが首でどこがウェストだかわかったらいいのに!」とアリスはこっそり考えました。

 しばらく何も言わなかったものの、あきらかにハンプティ・ダンプティはとても怒っていました。そしてやっと再び口をきいたときにも、それは深いうなり声でした。

 「まったく――なんと言ったらいいか――ベルトとチョーカーの区別もつかんとは――実に まったくもって ―― 不愉快なこと この上ない!」

 「はい、もの知らずなのはわかってるんですけど」とアリスはじつにへりくだった調子で言ったので、ハンプティ・ダンプティも機嫌をなおしたようです。

 「これはチョーカーだよ、お じょうちゃん。しかもその通り、非常に美しいものだね。白の王さまと女王さまからの贈り物なのだよ。どうだね!」

 「まあ、そうなんですか」アリスは、やっぱりこれはいい話題を選んだとわかって、とてもうれしく思いました。

 ハンプティ・ダンプティは、片ひざを反対のひざのうえにのせて、それをそれぞれの手でつかみました。そして、考え深そうに続けます。「お二人はこれをだね――非誕生日プレゼントとしてわたしに賜ったのであるのだ」

 「あの、すみません」とアリスは、不思議そうに言いました。

 「別に怒っちゃいないよ」とハンプティ・ダンプティ。

 「そうじゃなくて、 いったい 非誕生日のプレゼントってなんなんですか?」

 「お誕生日じゃないときにもらうプレゼントだよ、もちろん」

 アリスはちょっと考えこみました。そしてやっと「あたしはお誕生日のプレゼントがいちばんいいな」と言いました。


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