No.63

 「そんなのわかってもしょうがねぇだろ」と帽子屋さん。「あんたの時計は、いまが何年かわかるのかぃ、え?」

 「もちろんわかんないけど」とアリスは自信たっぷりにこたえます。「でもそれは、年ってかなりずっと長いことおんなじままだからよ」

 「おれの場合もまさにおんなしこった」と帽子屋さん。

 アリスはものすごく頭がこんがらがってきました。帽子屋さんの言ったことは、まるでなんの意味もないようですが、でもちゃんと文にはなってるのです。「どうもよくわからないみたいです」とアリスは、できるだけていねいに言いました。

 「ヤマネのやろう、またねてやがる」と帽子屋さんは、ヤマネの鼻ヅラにちょっとあついお茶をかけました。

 ヤマネはあわてて頭をふると、目をあけずにいいました。「いや、まったくまったく。おれもそう言おうと思ってたところ」

 「なぞなぞはわかったかよ」と帽子屋さんは、またアリスに話しかけました。

 「だめ、こうさん。こたえはなに?」とアリスはこたえました。

 「さっぱり見当もつかない」と帽子屋さん。

 「わしも」と三月うさぎ。

 アリスはうんざりしてため息をつきました。「もう少しましに時間をつかったら? それを、答のないなぞなぞなんか聞いて、むだにしたりして」

 「おれくらい時間と仲がよけりゃ、それをむだにするなんて言い方はせんね。やつだよ」

 「なんのことやらさっぱり」とアリス。

 「そりゃあんたにゃわかるめぇよ!」と帽子屋さんは、バカにしたようにみえをきりました。「どうせ、時間と口きぃたこともねぇんだろ!」


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