「ほれ、なんならあんたにもちょっとあやさせてやるよ!」と言いながら、公爵夫人は赤ちゃんを投げつけてよこしました。「あたしゃちょっと、女王さまとクロケーをするんでじゅんびがあるからね」そしてさっさと部屋を出てしまいました。コックは、その出ぎわにフライパンをなげつけましたが、おしいところではずれました。 アリスはずいぶんくろうして赤ちゃんをつかまえました。すっごくへんなかっこうの生き物で、あっちこっちに手足をつきだしてばかりいたからです。「ヒトデみたい」とアリスは思いました。かわいそうな子は、つかまえたときには蒸気機関車(じょうききかんしゃ)みたいみたいにフガフガ言っていて、しかもからだをまげたりのばしたりするので、そういうのがぜんぶあわさって、最初の一分かそこらは、かかえておくだけでせいいっぱいでした。 それをまともにあやすやり方がわかったので(ちなみに、それは赤ちゃんをひねって、いわばゆわえちゃって、そして右耳と左足をしっかりもって、それがほどけないようにしてやることだったんだけど)、アリスはすぐにそれを外につれだしました。「もしあたしがこの子をいっしょにつれてかないと、ぜったいに一日かそこらでころされちゃうものね。そんなところにのこしてったら、殺人でしょう?」アリスは最後のところを声に出していいました。すると生き物は、返事のかわりに鼻をならしました(このころには、くしゃみはやんでいたのです)。「鼻をならしちゃダメ。意見を言うのにぜんぜんちゃんとしたやりかたじゃないわよ」 赤ちゃんはまた鼻をならして、アリスはとっても心配になって、そのかおをのぞきこんでどうかしたのか見ました。まちがいなくこの子は、とっても上向きの鼻をしていて、人の鼻よりはブタの鼻ヅラみたいでした。それと、赤ちゃんにしては目がすっごく小さくなってきてます。ぜんぶあわせると、アリスとしてはこの子のようすがぜんぜん気に入りません。「でも、しゃくりあげただけかも」と思って目をのぞきこみ、涙がないかしらべました。
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