No.50

 アリスはおずおずととびらのところへいって、ノックしました。

 「ノックなんかしてもむだよーん」と召使い(めしつかい)が言いました。「わけは二つね。まずあたしがあんたと同じで、ドアのこっち側にいるもんねー。つぎに、中ではすんごいそうぞうしいもんで、だれもあんたのノックなんかきこえやしないのよーん」そしてたしかに、中ではまあとんでもない大そうどうになってるようです――だれかずっと泣きわめいてはくしゃみをして、しょっちゅうものすごいガシャーンというお皿かやかんがこなごなになったみたいな音がするのです。

 「おねがい、そうしたら、あたしはどうやって入ればいいのかしら」とアリス。

 「ドアがあたしたちのあいだにあったら、あんたがノックしても、ちょいとはいみがあるかもしれないけど」と召使い(めしつかい)は、アリスにかまわず先をつづけます。「たとえば、あんたが中にいたら、ノックすれば、あたしが出したげられるんだけどねぇ」こういいながら、かれはずっと空を見あげたままで、アリスはこれはどう考えても、失礼せんばんだと思いました。「でも、しかたないのかもね」とアリスはつぶやきました。「だってお目目があんな頭のすっごくてっぺんにあるんですもん。でもそれにしても、きいたら返事くらいすればいいのに。――どうやって入ればいいの?」と声にだしてアリスはくりかえしました。

 召使い(めしつかい)は言います。「あたしゃここにすわってるわぁ、あしたになっても――」

 このときおうちのドアがあいて、おっきなお皿がシュルルッと、めしつかいの頭めがけてとんできました。そしてその鼻をかすめると、うしろの木にあたってこなごなになりました。

 「――ひょっとしてあさってになっても」と召使い(めしつかい)はまったく同じ口ぶりで、なにもおきなかったみたいにつづけました。

 「どうやって入ればいいの」とアリスは、もっと大きな声でいいました。

 「そもそもあんた、入っていいのかしらねえ?」と召使い(めしつかい)。「まずそれが問題、でしょう、ねえ」


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