No.44

 「いまのはまちがっとるなあ」といもむしは申しました。

 「完全には正しくないです、やっぱり」とアリスは、ちぢこまって言いました。「ことばがところどころで変わっちゃってます」

 「最初っから最後まで、まちがいどおしじゃ」といもむしは決めつけるように言って、また数分ほど沈黙(ちんもく)がつづきました。

 まずいもむしが口をひらきました。

 「どんな大きさになりたいね?」とそいつがたずねます。

 「あ、大きさはべつにどうでもいいんです」とアリスはいそいでへんじをしました。「ただ、こんなにしょっちゅう大きさが変わるのがいやなだけなんです、ね?」

 「『ね?』じゃない」といもむしが言います。

 アリスはなにも言いませんでした。生まれてこのかた、こんなに茶々を入れられたのははじめてでした。だんだん頭にきはじめてるのがわかります。

 「それでいまは満足なの?」といもむしが言いました。

 「まあ、もしなんでしたら、もうちょっと大きくはなりたいです。身長8センチだと、ちょっとやりきれないんですもの」

 「じつによろしい身長だぞ、それは!」といもむしは怒ったようにいいながら、まっすぐたちあがってみせました(ちょうど身長8センチでした)。

 「でもあたしはなれてないんですもん!」とかわいそうなアリスは、あわれっぽくうったえました。そしてこう思いました。「まったくこの生き物たち、どうしてこうすぐに怒るんだろ!」

 「いずれなれる」といもむしは、水パイプを口にもどして、またふかしはじめました。


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