No.104

 「いまのは見られてよかったな。よく新聞で、裁判の終わりに『拍手があがりかけたが、廷吏(ていり)によってそくざに鎮圧(ちんあつ)された』ってかいてあるのをよく見かけるけれど、いままでなんのことかぜんぜんわからなかったもん」とアリスは思いました。

 「それで知ってることのすべてなら、下がってよいぞ」と王さまがつづけました。

 「これ以上はさがれませんや、うしろに柵があるもんで」と帽子屋さん。

 「ではすわるがよい」と王さまがこたえます。

 ここでモルモットがもう一匹かんせいをあげて、鎮圧(ちんあつ)されました。

 「わーい、あれでモルモットはおしまいね。これでちょっとましになるかな」とアリスは思いました。

 「それよりお茶をすませたいんで」と帽子屋さんが女王さまを心配そうに見ると、うたい手のいちらん表をよんでいるではありませんか。

 「いってよし」と王さまがいうと、帽子屋はあわてて法廷から出ていって、くつをはくことさえしませんでした。

 「――そしてあやつの頭を外ではねておしまい」と女王は廷吏(ていり)の一人に言い足しました。でも帽子屋さんは、その廷吏(ていり)がとびらにつくより先に、すがたを消してしまいました。

 「つぎの証人をよべ!」と王さま。

 つぎの証人は公爵夫人のコックでした。手にはコショウのはこをもっていて、とびら近くの人がいっせいにくしゃみをはじめたので、アリスはそれがだれだか、法廷に入ってくる前から見当がつきました。

 「証言をのべよ」と王さま。

 「やだ」とコック。

 王さまは心ぼそげに白うさぎを見ました。白うさぎは小声でもうします。「陛下、この証人を反対尋問(はんたいじんもん)しなくてはなりませんぞ!」


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