No.1
昔、 しな の都に、ムスタフという 貧乏 ( びんぼう ) な仕立屋が住んでいました。このムスタフには、おかみさんと、アラジンと呼ぶたった一人の 息子 ( むすこ ) とがありました。
この仕立屋は大へん心がけのよい人で、一生けんめいに働きました。けれども、悲しいことには、息子が 大 ( だい ) のなまけ者で、年が年じゅう、町へ行って、なまけ者の子供たちと遊びくらしていました。何か仕事をおぼえなければならない年頃になっても、そんなことはまっぴらだと言ってはねつけますので、ほんとうにこの子のことをどうしたらいいのか、両親もとほうにくれているありさまでした。
それでも、お父さんのムスタフは、せめて仕立屋にでもしようと思いました。それである日、アラジンを仕事場へつれて入って、仕立物を 教 ( おし ) えようとしましたが、アラジンは、ばかにして笑っているばかりでした。そして、お父さんのゆだんを見すまして、いち早くにげ出してしまいました。お父さんとお母さんは、すぐに追っかけて出たのですけれど、アラジンの走り方があんまり早いので、もうどこへ行ったのか、かいもく、姿は見えませんでした。
「ああ、わしには、このなまけ者をどうすることもできないのか。」
ムスタフは、なげきました。そして、まもなく、子供のことを心配のあまり、病気になって、死んでしまいました。こうなると、アラジンのお母さんは、少しばかりあった仕立物に使う 道具 ( どうぐ ) を売りはらって、それから後は、糸をつむいでくらしを立てていました。
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