ロミオは天に向かって誓おうとした、たとえわずかな不名誉であっても、そのような立派な女性に負わせようとはロミオは露ほども思ってなかったからだ。ところが、ジュリエットは、誓ってはなりませぬ、と彼を止めた。彼女にとっては、彼に会えたことはうれしかったが、今宵の約束は軽率で突然すぎるからうれしいものではなかったからである。しかしロミオが、今夜愛の誓いを取り交わしたいと何度も言い続けるので、ジュリエットは、私はすでにあなたへの愛を誓ってしまいました、と言った(ロミオが立ち聞きしたあの告白のことだ)。また、もう一度誓いを取り交わしたいから、前に捧げたものを返してほしい、海がはてしなく広いように、私の愛情も広く深いのですから、とも言った。 このように愛の言葉を交わしていると、ジュリエットは乳母に呼ばれた。この乳母は彼女といっしょに寝ており、もう夜明けだからベットにはいるときだと思ったのだ。しかしジュリエットは急いで戻ってきて、またロミオにふたことみこと言った。その内容は、もしロミオの愛が真実のもので、私と結婚したいのでしたら、私は明日、式の日取りを決めるための使者を送ります。そのときには、自分の財産をすべてあなたに捧げます、そしてあなたの夫としてどこへでもついていきますわ、というものだった。2人がそう取り決めている間にも、ジュリエットは何度も乳母に呼ばれ、中に入っては出ての繰り返しだった。彼女はロミオが自分から離れるのがなごり惜しく、そのさまは若い娘が、飼っていた鳥が飛び去ってしまうのが惜しくて、ちょっと手から飛ばせてみては絹糸で引き戻しているみたいだった。ロミオも別れを惜しんでいた。恋人たちにとって最上の音楽は、夜交わすお互いの言葉が紡ぎ出す響きなのだから、当然といえよう。
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