No.69

 「ハンプティ・ダンプティ壁の上
ハンプティ・ダンプティ大転落。
王さまの馬や兵隊総がかりでも
もとの場所には戻せぬハンプティ・ダンプティ」

 「最後の行は、この詩にはちょっと長すぎるのよね」とアリスは、ほとんど声に出して言いそうになりました。ハンプティ・ダンプティに聞こえるかもしれないのを忘れていたのです。

 「そんな突っ立って一人でブツブツ言ってるんじゃない。名前と用件を述べたまえ」

 「あたしの 名前は アリスですけど、でも――」

 「聞くからに間抜けな名前だ!」とハンプティ・ダンプティは、短気そうに口をはさみます。「それでどういう意味?」

 「名前って、意味がなきゃいけないんですか?」アリスは疑わしそうにたずねます。

 「いけないに決まってるだろうが」ハンプティ・ダンプティはちょっと笑いました。「 わたしの 名前はといえば、これはわたしの形を意味しておる――しかも、すてきでかっこいい形であるな。あんたのみたいな名前では、ほとんどどんな形にだってなれそうじゃないか」

 「なぜたった一人でこんなところにすわってらっしゃるんですか?」アリスは口論をはじめたいとは思わなかったのでこう言いました。

 「そりゃもちろん、ここにはほかにだれもいないからだよ!」とハンプティ・ダンプティ。「 その程度のものに 答えられんとでも思ったか! 次いってごらん」

 「地面におりたほうが安全だと思わないんですか?」アリスは、別になぞなぞを続けようと思ったわけではなく、単にこの変な生き物に対し、善意から心配してこう言ったのです。「だってその壁、 とっても せまいじゃないですか!」

 


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