No.27

  「新鮮な空気のおかげよ。こうして外に出ると、空気がすばらしくいいから」とバラが言います。

 「ちょっとお目にかかってこようっと」とアリスは言いました。花とおしゃべりするのもおもしろかったのですが、本物の女王さまとお話しするほうが、ずっとすごいなと思ったからです。

 「それは絶対に無理よ」とバラが言います。「 あたしなら 反対方向に歩くよう忠告しますがね」

 これはまったくのナンセンスにしか聞こえなかったので、アリスは何も言わずに、すぐに赤の女王さまに会いにでかけました。びっくりしたことに、いっしゅんで女王さまを見失ってしまい、気がつくとまたもや玄関を入ろうとしているところでした。

 ちょっとムッとしてアリスは身をひくと、あちこち女王さまをさがしまわって(やっと見つけた女王さまはずいぶんと遠くにおりました)、こんどはちょっと策を練って、反対方向に歩いてみようと思ったのです。

 これは見事に成功しました。ほんの一分かそこら歩いただけで、赤の女王さまと鉢合わせすることになりました。さらに、さっきからいっしょうけんめい行こうとしていた丘もすぐそこです。

[イラスト: 赤の女王とご対面]

「おまえ、どこからきた?」と赤の女王さま。「どこへ行くつもりだえ? はい、背筋のばして、はきはきしゃべって、指をそんなもじもじさせるんじゃない!」

 アリスはこうした言いつけをすべて守り、なんとかかんとか、自分の行き先がわからなくなったことを説明しました。

 「 自分の 行き先とは、何を申しておるのやら」と女王さま。「ここの行き先はすべて、 このわらわの ものなんだからね――でも、そもそもなんだってこんなところへ出てきたのかえ?」と、ちょっとやさしい口調でつけくわえます。「何を言うか考えてる間に会釈をなさい、時間の節約になるから」

 


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