No.89
-ロブスターのカドリーユおどり-  

 

 にせウミガメはふかいためいきをついて、ひれの一つで目をおおいました。そしてアリスを見て話そうとするのですが、そのたびにすすり泣きがでて、一分かそこらは声がでません。「のどに骨がつかえたときといっしょだよ」とグリフォンは、にせウミガメをゆすったり、背中をたたいたりしはじめました。やっとにせウミガメは声が出るようになって、ほっぺに涙をながしながら、またつづけました。

 「あなた、海のそこにはあんまり住んだことがないかもしれないし――」(「ないわ」とアリス)――「あとロブスターに紹介されたこともないようねぇ――」(アリスは「まえに食べたことは――」と言いかけて、すぐに気がついて、「いいえ一度も」ともうしました)「――だから、ロブスターのカドリーユおどりがどんなにすてきか、もう見当もつくわけないわね!」

 「ええ、ぜんぜん。どういうおどりなんですか?」とアリス。

 グリフォンがいいました。「まず海岸にそって、一列になるだろ――」

 「二列よ!」とにせウミガメ。「アザラシ、ウミガメ、シャケなんか。それでクラゲをぜんぶどかしてから――」

 「これがえらく時間をくうんだ」とグリフォンが口をはさみます。

 「――二回すすんで――」

 「それぞれロブスターがパートナーね!」とグリフォンもわめきます。

 「もちろん。二回すすんで、パートナーについて――」

 「――ロブスターを替えて、同じように下がる」とグリフォンがつづけます。

 そしてにせウミガメ。「そしたら、ほら、ロブスターを――」

 「ほうりなげる!」とグリフォンがどなって、宙にとびあがりました。

 「――沖へおもいっきり――」

 「あとを追っかけて泳いで!」とグリフォンぜっきょう。


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