No.68

 ヤマネはあわててはじめました。「むかしむかし、三人姉妹がいなかに住んでおりました。なまえは、エルシー、レイシー、ティリー。そしてこのいなか姉妹は、井戸のそこに住んでいまして――」

 「なにを食べてたの?」アリスは、食べたりのんだりする質問に、いつもすごく興味(きょうみ)があったのです。

 「とうみつを」とヤマネは、一分かそこら考えこんでからいいました。

 「そんなこと、できるはずないわ」アリスはしずかにもうしました。「だって病気になっちゃうもの」

 「まさにそのとおり」とヤマネ。「とっても病気でした」

 アリスは、そんなとんでもない生き方ってどんなものか、想像してみようとしました。でもなぞが多すぎたので、つづけました。「でも、なんだって井戸のそこになんかに住んでたの?」

 「茶ぁもっとのみなよ」と三月うさぎが、とってもねっしんにアリスにすすめました。

 「まだなにものんでないのよ。だからもっとなんてのめないわ」アリスはむっと返事をします。

 「ちょっとはのめない、だろ。なにものんでないなら、ゼロよりもっとのむなんてかんたんだぁ」と帽子屋さん。

 「だれもあんたになんかきいてないわ」とアリス。

 「ひとのこととやかく言うなってったの、だれだっけねぇ」と帽子屋さんは勝ちほこってききました。

 アリスはなんとこたえていいかわかりませんでした。だからお茶とバターパンをちょっと口にして、それからヤマネにむかって質問をくりかえしました。「その子たち、なんで井戸のそこに住んでたの?」

 ヤマネはまた一分かそこら、それについて考えてから言いました。「とうみつ井戸だったのです」

 「そんなものあるわけないでしょう!」アリスは怒り狂って言いかけましたが、帽子屋さんと三月うさぎが「シイッ! シイッ」と言って、そしてヤマネはきつい口ぶりで言いました。「れいぎ正しくできないんなら、話のつづきはあんたがやってくれよ」

 


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