No.66

 ここでヤマネがみぶるいして、ねむりながらうたいはじめました。「きらきら、きらきら、きらきら――」そしてこれをいつまでもつづけたので、みんなでつねってなんとかやめさせました。

 「うん、それでおれが歌の一番もうたいおわらないうちに、女王さんがとびあがって、ぎゃあすか言いやがってさ、『こやつ、ひょうしの時間をバラバラにしておるではないか! 首をちょん切れ!』

 「まあなんてひどいざんこくな!」とアリスはさけびます。

 「で、それからずっと、時間のやつったら、バラバラにされたのを根にもって、おれのたのみをいっこうにきいてくれやしねぇんだ。だからいまじゃずっと6時のまんまよ」

 急にアリスはひらめきました。「じゃあそれで、お茶のお道具がこんなに出てるのね?」

 「そ、そゆこと」と帽子屋さんはためいきをつきました。「いつでもお茶の時間で、あいまに洗ってるひまがないのよ」

 「じゃあ、どんどんずれてくわけ」とアリス。

 「ごめいとう。使いおわるとだんだんずれる」

 「でも最初のところにもどってきたらどうなるの?」アリスはあえてきいてみました。

 三月うさぎがわりこみました。「そろそろ話題を変えようぜ。もうあきてきたよ。このおじょうちゃんがお話をしてくれるのに一票」

 「悪いんですけど、なにも知らないの」とアリスは、この提案にかなりびっくりして言いました。

 「じゃあヤマネにやらせろ!」と二人はさけびました。「おいヤマネ、起きろってば!」そして両側から同時につねりました。

 ヤマネはゆっくり目をあけました。「ねてないよぉ」と、しゃがれたよわよわしい声で言います。「おまえたちのせりふ、ぜーんぶきいてたよぉ」

 「お話してくれよぅ!」と三月うさぎ。

 「ええ、おねがい!」とアリスもたのみます。

 帽子屋さんが言います。「それと、さっさとやれよ。さもねぇと、おわんないうちにねちまうだろ、おめぇ」


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