No.36

 アリスがえんとつの足をできるだけ下までおろしてまっていると、小さな動物(どんな動物かはわかりませんでした)が、えんとつのすぐ上のところで、カサコソとうごくのがきこえました。そこでアリスはこう思いました。「これがビルね」そしてするどく一発けりを入れて、どうなるかまちかまえました。

 最初にきこえたのは、みんながいっせいに合唱する声です。「ビルがあがったあがったぁ!」そしてうさぎの声がそこでしました――「おい、キャッチしろ、しげみんとこのおまえ!」そしてしずかになって、それから口々に声がきこえます――「頭をもちあげろ――ブランデーだ――息をつまらせるな――どうだった、ぼうず! なにがあった? なにもかも話してみろ!」

 最後に、よわよわしい小さな、キイキイ声がきこえました(「あれがビルね」とアリスは思いました)「ええ、ぜんぜんわかんないんっすけど――いやもうけっこう、どうも。もうだいじょうぶっす――でもちょいと目がまわっちまって話どころじゃ――わかったのは、なんかがビックリばこみたいにせまってきて、それでおいら、ロケットみたいにビューン、でして!」

 「いやはやあんた、まったくそのとおりだねえ」とみんな。

 「これは家に火をつけるしかないぞ!」とうさぎの声がいいました。そこでアリスはおもいっきり声をはりあげました。「そんなことをしたら、ダイナをけしかけてやるから!」

 すぐに死んだみたいにしずかになったので、アリスは考えました。「つぎはいったいなにをする気かしら! ちょっとでも頭があれば、屋根をはずすはずだけど」一分かそこらで、また一同は動きまわりはじめ、うさぎの声がきこえました。「手おし車いっぱいくらいでいいな、手はじめに」

 「手おし車いっぱいのなんなの?」とアリスは思いました。でも、すぐにわかることになりました。というのも、つぎのしゅんかんに、小石が雨あられと窓からとびこんできて、いくつか顔にあたったのです。「やめさせてやるわ」とアリスはつぶやいて、どなりました。「あんたたち、二度とやったらしょうちしないわよ!」するとまた、死んだようにしずかになりました。

 


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