No.34

 すぐにうさぎが戸口にやってきて、それをあけようとしました。が、とびらは内がわにひらくようになっていて、アリスのひじがそれをしっかりおさえるかっこうになっていました。だもんで、やってもダメでした。アリスはうさぎがこうつぶやくのをききました。「じゃあまわりこんで、窓から入ってやる」

 「そうはさせないわよ」とアリスは思って、音のかんじでうさぎが窓のすぐ下まできたな、と思ったときに、いきなり手をひろげて宙をつかみました。なにもつかめませんでしたが、小さなひめいが聞こえて、たおれる音がして、そしてガラスのわれる音がして、だからたぶん、うさぎはキュウリの温室(おんしつ)か、なんかそんなものの上にたおれたのかも、とアリスは思いました。

 つぎに怒った声がします――うさぎのです――「パット! パット! どこだ?」するとアリスのきいたことのない声が「へいへいこっちですよ! リンゴほりしてまっせ、せんせい!」

 「リンゴほり、がきいてあきれる!」とうさぎは怒って言います。「こい! こっから出るのてつだってくれ!」(もっとガラスのわれる音)

 「さてパット、あの窓にいるのは、ありゃなんだね?」

 「うでにきまってますがな、せんせい!」(でもはつおんは、「しぇんしぇえ」だったけど)

 「うでだと、このばか。あんなでかいうでがあるか! 窓いっぱいほどもあるだろう!」

 「そりゃそのとおりですけどね、せんせい、でもうでにはちがいありませんや」

 「とにかく、あんなものがあそこにいちゃいかん。おまえいって、どかしてこい!」


< back = next >
 < 目次 >