No.32

 このころには、きちんとした小さな部屋にたどりついていました。窓ぎわにテーブルがあって、そこに(思ったとおり)せんすと、小さな子ヤギ皮の手ぶくろが、二、三組おいてありました。せんすに手ぶくろを一組手にとって、部屋を出ようとしたちょうどそのとき、鏡の近くにたっている小さなびんが目にとまりました。こんどは「のんで」と書いてあるラベルはなかったのですが、それでもふたのコルクをとって、くちびるにあてました。「なんでも食べたりのんだりすると、ぜったいなーんかおもしろいことがおきるんだな。だから、このびんがなにをするか、ためしてみようっと。もっと大きくしてくれるといいんだけど。こんなちっぽけでいるのは、もうすっかりあきちゃったもん」

 たしかにそうなりました。しかも思ったよりずっとはやく。びんの半分ものまないうちに、頭が天井におしつけられて、首がおれないようにするには、かがむしかありませんでした。アリスはすぐにびんをおいて、つぶやきます。「もうこのくらいでたくさん――もうこれいじょうは大きくならないといいけど――いまだってもう戸口から出られない――あんなにのまなきゃよかった!」

 ざんねん! そんなこといってもいまさらおそい! アリスはどんどん大きく、もっと大きくなっていって、やがて床にひざをつくしかありません。もう一分もすると、これでも場所がなくなってきて、片ひじをとびらにくっつけて、もう片うでは頭にまきつけて、よこになるみたいなかんじにしてみました。それでもまだ大きくなりつづけて、窓から片うでをだして、片足はえんとつにつっこみました。そしてこうつぶやきます。「もうこれで、なにがおきてもどうしようもないわ。いったいどうなっちゃうんだろう?」

 アリスとしては運のいいことに、小さなまほうのびんは、もうききめがぜんぶ出つくして、それ以上は大きくなりませんでした。それでも、とてもいごこちは悪かったし、この部屋から二度と出られるみこみも、ぜったいになさそうだったので、アリスがあまりうれしくなかったのもあたりまえですね。

 


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